<日中首脳会談>改善思惑にズレ 首相「対北朝鮮協力必要」

11日のベトナム・ダナンでの安倍晋三首相と習近平中国国家主席との会談では、双方が関係改善に向けた意欲を示した。首相は、核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応で中国との連携が不可欠と考え、習氏は目指しているアジア太平洋地域での「大国外交」を推進するうえで、日中関係の安定化を求めている。歩み寄りの機運は高まっているが思惑にはズレがある。

 会談冒頭、習氏はこれまで安倍首相には見せたこともないような笑顔で握手に応じた。習氏が「関係改善に向けまだまだやることはあるが、よい流れに乗って、発展を推進したい」と呼びかけると、首相は「関係改善を力強く進めていきたい。日中両国は世界の安定と平和に大きな責任を有している」と語り、北朝鮮対応での日中連携に期待を示した。

 これまで首相は、法の支配や航行の自由の重要性を訴え、東・南シナ海での中国の動きを批判してきた。だが、最近は対中批判のトーンを抑えていた。

 6日のトランプ米大統領との共同記者会見では「自由で開かれた海洋秩序の維持」に触れたが、これは日米が掲げる「インド太平洋戦略」を推進するとの文脈で、東・南シナ海への直接の言及は避けた。日本政府が発表した「日米首脳会談の成果」には「中国政府と建設的な対話を継続することの重要性を確認した」との記述が盛り込まれた。

 9月の日中国交正常化45周年を祝う式典で首相は「隣国同士であるが故の問題があるが、個別の問題が関係全体に影響を及ぼさないようコントロールし、関係を発展させていく考えだ」と表明していた。

 対中関係の改善を急ぐのは、「北朝鮮への圧力を最大限に高める」との首相の方針を実現するうえでも、北朝鮮に大きな影響力を持つ中国の協力が不可欠との認識が強まっているためだ。

 北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返し、核実験を強行するなか、首相は米露韓など関係国の首脳と電話協議を相次いで行ったが、習氏とは電話できるような関係になかった。圧力重視の首相と対話重視の中国との間に温度差があることは明白だが、その違いを埋めるためにも対話が必要と指摘されてきた。

 首相は習氏に「日中両国のリーダーシップが強化される中」での関係改善を強調した。首相は先の衆院選で大勝し、さらなる長期政権を視野に入れる。習氏も中国共産党大会を経て権力を集中したと指摘される。日中関係の局面を転換する政治環境が整ったとの意味合いだとみられる。【加藤明子、ダナン(ベトナム中部)朝日弘行】

 ◇習氏「大国外交」を推進

 習氏が11日にベトナム・ダナンで安倍首相と会談したのは、中国が描くアジア太平洋地域での大国外交を円滑に進めるために、日中関係の改善ムードを醸成する思惑があるとみられる。

 習氏は9日のトランプ米大統領との会談で「中米双方はアジア太平洋地域で積極的な協力を繰り広げ、多くの地域諸国に中米両国の共通の友達の輪に加わってもらわなければならない」と提案した。

 10月の中国共産党大会で大国路線を打ち出した習氏にとって、すでに大国である米国との衝突を避け、両大国が共存する将来像を共に描くことは大きな課題になっている。

 しかし、アジア太平洋地域では貿易・投資などの協力は進展しても、北朝鮮や南シナ海など対立の火種は残ったままだ。中国との間に問題を抱える国々を米中の「友達の輪」に加えられれば、地域問題を米中で管理していく契機になりそうだ。

 習氏が提唱する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」は、巨額のインフラ投資を通じて中国を中心にした「友達の輪」を作る試みといえる。安倍首相は6月に「国際社会の共通の考え方を取り入れる」ことを条件に協力する姿勢を示した。

 一方、米国は民主主義を軸にした「自由で開かれたインド太平洋戦略」を描いており、安倍首相も6日のトランプ氏との会談で戦略を共有することを確認した。中国は一帯一路とインド太平洋戦略のすり合わせを進め、対米関係を安定させるためにも日本との対立は回避したいと考えている模様だ。

 中国中央テレビによると、習氏は11日の会談で安倍首相に「中日関係を改善させる鍵は相互信頼にある。日本側は実際の行動と政策を増やし、中日が互いに脅威とならないとの戦略的な共通認識を培ってほしい」と呼びかけた。

 日中平和友好条約締結40周年になる来年には、安倍首相訪中と習主席初訪日が視野に入っており、中国側は対米関係を横目に日本との関係改善を進めることになりそうだ。

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