<英国>メイ首相、分裂解消図る 総選挙前倒し EUは困惑

英国のメイ首相は18日、総選挙を6月に前倒し実施する方針を打ち出した。先行きの見通せない欧州連合(EU)からの離脱という「大仕事」を控え、英社会の分裂や、政権内の足並みの乱れという不安定要素を一掃するため、総選挙のタイミングを見計らって発表したとみられる。一方、突然の発表にEU側は戸惑いを隠せないでいる。

「強力で安定したリーダーシップを確立する必要がある」。メイ氏は首相官邸前での演説でこう強調。EU離脱を決めた昨年6月の国民投票後、キャメロン前首相の突然の辞任を受けて総選挙を経ずに首相に就任したメイ氏には「国民の信を得ていない」という不安がつきまとっていた。

 EU離脱を巡り国内が二分され、メイ氏は就任以来、英国の結束を強調してきた。最大野党・労働党だけでなく、与党・保守党にも「元残留派」が多い。離脱方針を巡っても、移民規制を優先する「強硬な離脱(ハード・ブレグジット)」に慎重な意見は多く、政権内でも強硬な離脱派と経済を優先する勢力との間で足並みの乱れが生じていた。

 こうした事情を背景にメイ氏は、世論の動向を注視すると共に、政権内での基盤固めを進め、総選挙のタイミングを模索していた。

 最大野党・労働党はコービン党首の指導力不足から世論調査の結果は2015年の総選挙以降、低迷。保守党の支持率は4割超で推移し、労働党を20ポイント以上も上回る。スコットランドが独立に向けた2度目の住民投票を実施する方針を打ち出す中、与党内には「国内問題も含め、難事に立ち向かうには強い与党・保守党が必要」(保守党議員秘書)との認識が広がった。

 また、EU主要国のフランスでは大統領選挙の決選投票が5月に、ドイツでは総選挙が9月末に予定されている。両選挙の間は英国とEUとの離脱交渉は実質的には進まないとみられており、メイ氏にとって総選挙での基盤固めは、このタイミングしかなかった。

 一方、メイ氏の「サプライズ」発表は欧州委員会の定例記者会見中に飛び込んだ。広報官は「ノーコメント」と述べるにとどめた。

 英国を除く27加盟国は今月29日に特別首脳会議を開き、対英交渉のガイドラインを採択する予定。英総選挙が行われれば、実質的な交渉開始は先送りされる可能性が高い。EUの基本条約であるリスボン条約に基づき、交渉期間は英国が正式に離脱通告を行った3月29日から原則約2年と定められている。EU側は双方の議会で批准するための期間を考慮して約1年半で合意をまとめたい意向だ。「手切れ金」の支払いなど交渉は当初から双方の利害が衝突すると予想されており、選挙続きによる交渉期間の「ロス」は双方にとって影響は小さくない。

 一方、18日のロンドン外国為替市場は乱高下した。メイ氏の演説前は発表内容に対する不安感からポンドが売られたが、総選挙を発表した演説後はポンドは逆に急伸。一時1ポンド=1.26ドル台後半を付けて約2カ月半ぶりの水準まで上昇。市場ではメイ氏率いる保守党が大勝するとの見方が強く、安定した政権運営に対する期待感が広がったとみられる。

 ◇メイ氏は追い詰められて解散を決める

 細谷雄一慶応大教授(英国外交史)の話 英国内の報道を追う限りでは、解散総選挙を決めたメイ英首相の決断はサプライズではない。欧州連合(EU)離脱に関して、当初のメイ氏は単一市場に残る「ソフト・ブレグジット(英国のEU離脱)」を望んでいた。しかしEUが認めなかったことからメイ氏の想定が崩れ、「ハード・ブレグジット」を選ばざるを得なかった。保守党内でも分裂が続き、メイ氏は追い詰められて解散を決めたと思う。

 保守党が選挙で勝ったとしても議席を減らした場合には、連立相手探しや今後の交渉が難航するはずだ。かつて連立を組んだ自由民主党は議席を減らしている上に、EU残留を支持していた政党だ。保守党が負ける場合でも、最大野党の労働党や他の政党がEU離脱の方向性でまとまらない可能性は大きい。

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